2014年現在も依然としてきわめてスリリングに逸脱したリリース群を放ち続けるBLACK SMOKER RECORDSから新たに届けられたのは、稀代のビーツ作家・Fumitake Tamura (Bun) による自身初のミックスCD「3 seconds」。
或る実験エクササイズによると「3秒」という時間が人間の聴覚における「経験のひとかたまり(=チャンク)」であり、すなわち「聴覚的現在」の長さであると結論付けられているという。聴覚の基本は時間的な差異であり、言い換えれば聴覚が聴くのは本質的に時間そのものである。ある音の状態Aが状態Bに向かう変化を知覚し、AとBの関係性を聴き取ることで、人間は(ぼぼ無意識的に)旋律やリズムとしてその音を認識する。そうした音の連鎖によって生まれる相互の関係性は音響旋律と呼ばれる。音響旋律とは、ある音の状態Aが状態Bへ向かう意識の志向性の連鎖であり、音Bに到達したときの音Aに対する記憶が、連続する時間の中で水平方向に連鎖し蓄積されていくことで生まれるとされている。3秒というごくわずかなひとかたまりの時間のあいだに、人間の聴覚はこうしたリニアで連続的な意識と記憶をプロセシングして蓄積または忘却しているということだ。
この作品においてFumitake Tamura(Bun)が展開しているのは、この「3秒」という聴覚的現在が内包しうる経験と現象に関するさまざまな視点からの考察だ。ミックスCDというフォーマットにありながら、無数に散らばるサウンドの断片が音響旋律を形成し、共時的(シンクロニック)な垂直構造と通時的(ダイアクロニック)な水平構造を行き来しながらあらゆる聴覚的現在が67分間を通して不断に連続していく。「音を聴く」という知覚的生理を悉く刺激するその体験は、有り体な物語性を軽やかに回避しながらもなおスリリングな興奮を誘い、サウンドに対し静かに鑿(のみ)を打ち込みつづけるFumitake Tamura (Bun)ならではの作家性はさらなる深みと広がりをもって立ち上ってくる。ひとことで言えば、まぎれもない傑作。
PROFILE : FUMITAKE TAMURA (BUN)
その音楽性で世界中から高いリスペクトを集め、国内外のレーベルから挑戦的な作品のリリースを続けている国内屈指のアーティスト。音の隙間に浮かび上がるノイズにさえ音楽的な表情を与えてしまう音の構築は、2012年の「Bird」、そして2013年の「Minimalism」といったソロ・リリースを経てひときわ研ぎ澄まされ、音響の彫刻として目の前に立ち上がる。クリエイティビティーを高く掲げた自身のレーベル "TAMURA" からの実験的な作品だけでなく、ヘヴィーなビートを抱えてL.Aの伝説的パーティー Low End Theoryへの出演を果たしている。
■ 2014年6月30日発売
販売価格 | 1,650円(税150円) |
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型番 | CD_BU054 |
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