我々が生息する世界でハウス・ミュージックほど狂った音楽はないが、トリップこそがその最初の目的である以上、仕方がないと言えば仕方がない。そこに理由はない。ハウス・ミュージックに比べたら、サイケデリック・ロックなんぞ言い訳である。だいたい何を好きこのんで底なし沼のごとき幻覚の世界の深みにはまりたがるのか……。しかも、いい大人どもが。これは、ホドロフスキーのクラブ・ヴァージョンである。つまり、いま都内でもっともドラッギーな現場をのぞき見したい人にはまたとないミックスCDである。つーか、合法ドラッグである。私は、もっともドラッギーな最新の音楽はシャックルトンという人だと思っていたのだが、それに勝るとも劣らない。コンピュー魔、A魔NO、Dr.NISHI魔RA、マジで恐るべし。私は、コンピュー魔とDr.NISHI魔RAに関しては、知識という観点でも尊敬している。彼らは20年前から、裏名盤のようなレコードの多くをご存じでいらっしゃっる。とは言うものの、ここには、彼らの知識が総動員されているばかりではない。アンビエント、インダストリアル・ファンク、コズミック、ジャズ、ダブ……クラブ・サウンドのあらゆるフォームを吸い尽くして、とことんドラッギーに再構築する。パラダイス・ガラージから30年以上の年月を経て、DJカルチャーはこの日本で、驚嘆すべき魔道を切り拓いている。たしかに「これはヤバイ」と言われるミックスCDはたくさんある。が、悪魔の沼はそのなかでももっともヤバイ路線をひた走っている。本作は、その貴重なドキュメンタリーだ。いつかきっと未来人によって発掘されるであろう。
(野田 努)
PROFILE :
2008年結成。 現在のレジデントである沼クルー(沼人)は、コンピュー魔、A魔NO、Dr.NISHI魔RAの三人。 東京・下北沢MOREの沼に生息。 活動は不定期ながらおよそ季節ごとの開催を目指している。当初は、トビー・フーパーの1977年の映画「悪魔の沼」の、映画の内容というよりも日本版VHSビデオのアートワークに影響を受け、それぞれが独自の視点でDJミックスして沼の可能性を模索していたが、2013年より新たな試みとして、3人によるバック・トゥ・バックなDJスタイル、プラス、魔icにロボ宙をフィーチャーして、予測不能な更なるネクストな沼世界を探っている。 これまでに、E魔C魔D、瀧魔憲司、二魔裕志、MOOD魔N、 魔ltz、魔DRINK、Toshi魔-BING-Kaji魔ra、2魔ng (一★狂/国際ボーイズ)、C魔H魔E魔E、C×魔×T、YA魔STA THUGRAW (Pan Pacific Playa)、YO!魔イキー (2much crew)、Cherryboy 魔anction、魔力、魔AOROCK(THE CREAMS)、OSA魔(TEXACOLEATHER MAN)、UJT (魔ン画トロニクス)、 魔rakam(i diskunion)、魔ペリーなど、多彩なDJやアーチスト達が独自の沼を演出してきた。 2011年にデビューMIXCD「沼日和」を、2013年には下北沢MOREでのLIVE DJ MIX2枚組「ドキュ魔ント」をリリース。そして、今春3月にはBLACK SMOKER RECORDSより、現在の沼の真骨頂である待望の新作MIX「涅槃 -Nirva魔-」の発売を予定している。
■ 2014年3月13日発売
販売価格 | 1,650円(税150円) |
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型番 | CD_AK029 |