"広い広いこの世界には 物語が必要なのさ" 繊細かつ変幻自在なビートの上で、穏やかに舞うメロウな歌声。ESME(エズミ)による優しき5篇の音風景は、現実と向き合うために描かれたファンタジーである。
都市型フェス『KAIKOO POPWAVE FESTIVAL 2012』を成功に導いたインディペンデント・レーベル、POPGROUP。ヒップホップからレゲエ、ハードコアまでジャンルを問わず"聴き手に真摯に響く音"をピックアップしてきた彼らが、レーベルとしては初めて、男性シンガーソングライターを手掛けることになった。そのアーティストの名は、ESME(エズミ)。1988年生まれ、現在24歳の彼は、2000年前後に隆盛を極めていたジャパニーズ・ミクスチャー〜ヒップホップシーンに衝撃を受け、音楽制作を開始。テクノ/アンビエントサウンドに接近を図った「Solvents and orbits」名義での活動を経て、自らの歌と詩にフォーカスをあてたソロユニット・ESMEを始動させた。彼のデビュー作となる5曲入りミニアルバム『the butterscotch sessions』は、彩り豊かな電子音を主体にデザインされたディープなサウンドに、オーガニックな佇まいの歌声が溶け合うことで生み出された、ファンタジックなエレクトロ・ポップス集だ。フレーズやメロディをDTM上で構築していくトラックメイカー的手法によって制作されており、歌とリズムが並列に扱われているのがその特徴と言える。シャープで心地良いビートや、サウンド全体に奥行きと浮遊感を与えるダブ・エフェクトからは、ESMEがフェイバリットとするフィッシュマンズやレディオヘッド(『IN RAINBOWS』以降)、さらにwarp系アーティストからの影響も感じさせる。
また、ESME本人が「ひとつの音符にふたつ以上の言葉を入れないようにして、リズムとか響きとか、そういったものを出せるように意識した」と言うように、日本語の"母音と子音が一音一音はっきり出る"語感の快楽性を追求した歌詞にも味わいがある。「〜よ」、「〜でしょ」といった女性語が使われているのもそうした模索のひとつであり、それがESMEの柔らかな声質と非常にフィットしているのもポイントとして挙げておきたい。切ない世界観ながら疾走感に溢れた「passenger of July」、ピアノの物悲しい旋律とダビーなサウンドがトリップへと誘うチルアウトソング「synchrome」、"広い広いこの世界には 物語が必要なのさ"という印象的なフレーズと、朴訥ながら熱を帯びたボーカルが映える「SEEDS」など、それぞれ異なる表情を見せる曲たちはどれも珠玉。近年のダブ・ステップやエレクトロ・ポップスと類似性を持ちながらも、より暖かな手触りを感じる『the butterscotch sessions』。デビュー作でありながら、その芯の強さと説得力に圧倒される作品だ。(森 樹)
1. from
2. passenger on July
3. SEEDS
4. synchrome
5. sunset
6. passenger on July」Ametsub remix (仮タイトル)
7. synchrome」EeMu remix (仮タイトル)
8. from」Madegg remix (仮タイトル)
ESME(エズミ):1988年・埼玉県生まれのトラックメイカー/シンガーソングライター。THA BLUE HERBやShing02などジャパニーズ・ヒップホップに衝撃を受け、高校時代はラッパーとして活動。その後、macを使ったトラック制作をスタートさせると、CM音楽を手掛ける傍ら、TBS系ドラマ「SPEC」のサウンドトラックにも参加。2012年3月には、テクノ/アンビエント系の楽曲が収められたEP『Maple Hill』(LOW HIGH WHO?レーベル)を「Solvents and orbits」名義でリリースした。並行して、2011年春から自身の歌と詩にフォーカスしたソロプロジェクト・ESMEとして楽曲制作を進め、約一年がかりで今作のデモを仕上げる。ESME本人から届けられたデモ音源のクオリティに驚いたPOPGROUPは早々に契約を決断し、今作のリリースに至った。
■ 2012年9月12日発売
販売価格 | 1,676円(税152円) |
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型番 | CD_ES001 |
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