1stにあたる前作『Instinct』から三年強、自身のレーベルであるSOUND EXPERIENCEからリリースされた、"SOUND EXPERIENCE EP"、"ORIENTAL FUNK EP"、2タイトル12インチからの5曲を含む、全13曲収録、待望のセカンド・フルアルバム『Backside of The Moon』ここに完成。凡百にリリースされる、所謂アブストラクトヒップホップを推し進めるなかで、抜きん出た才を発揮してきたことは、名だたるDJ (DJ KRUSH,DJ KENTARO,DJ WESSUN,DJ DUCT) によるヘヴィプレイや、MIXCDへの楽曲収録 (ASA,DJ YASA,DJ DOLBEE) などを言わずとも、これまでの作品、および彼のDJイングを聞いてもらえれば言うまでもない。そして本作に置いても、もちろんそれは感じ取ることが出来る。

　"ORIENTAL FUNK EP" でも強く感じたことだが、自身のバックグラウンドである90`s黄金期のヒップホップネスをストレートに体現して出来た1stに比べ、アルバムを通し、雑食度が増した仕上がりになっている。もちろん3や5など、ストレートなヒップホップビートを施した曲もあれば、例えば、今までに無い複雑なドラムパターンと音色が耳に心地よい流麗なブレイクビーツの1、インダストリアルな趣のある4や6、ダンスホールビートを取り入れた10、初披露となるビートレストラックの13など、そのトラックメイキング術とストイックに蓄積したセンスは間違いなく1st時よりもさらに進化し、「聴かせること」と「踊らせること」の要素を兼ね備えたハイクオリティな楽曲群が詰まっている。そして思うに大事なことは、彼は幅の広がりによってヒップホップを体現しなくなったのではなく、ネクストレベルで昇華することに情熱を注ぎ、成功しているという点である。

　彼は現在、地元である徳島において、オールヒップホップのイベント『REPRESENT』を主催する。彼自身もマイクを握るそのパーティーには多くのB-BOYが集まり、MC、DJ達がスキルを競い、高めあっている。そこで培われた、言葉や文章にすると陳腐になりかねない、現場にいた者にしかわからない、あの崇高な「黒い感覚」こそ彼のニューアルバムにおける大事な要素のひとつになっているのではないかと感じている。セカンドアルバムを聴き終えて、やはり彼は根っからのB-boyであると確信した。この三年強、AKT THE JNが持つビートへの探究心は一日も休むことは無かったのだろう。徳島という本州からは、東京からは離れたその土地で、このような素晴らしい作品は産まれているのである。

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